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すこし先にあったスチールのテーブルを引き寄せて、おにぎりとチョコレートを置いた。足元に放り出してあったままの小さなワンショルダーバッグもテーブルに乗せた。
「あ、すみません」
紺色のワンショルダーバッグには赤いラインが入っていて、ラインに沿って小さくあるゲームの名前が英語でプリントしてある。どうやらノベルティかそのゲームのグッズらしい。
こういうバッグまであるのか。妹が今ハマっているゲームだから何度か一緒にプレイしたことがあったので、亮真も覚えていた。
「あ、”はすみん”だ」
思わず言ってしまったのは、そのキャラクターが滅多に手に入らないレアアイテムだと、ほんの2日前に妹が騒いでいたからだ。
「え? はすみん?」
彼はびっくりしたのか目を丸くして亮真を見た。初めて真っ直ぐ目が合ったが、彼はさっとそらしてしまった。人と目を合わせるのが苦手なタイプなのかもしれない。
「あ、このキャラクターです」
亮真がフックにつけてあるストラップを指差すと、彼はちいさく頷いた。
「ああ、これ。“はすみん”なのか」
どうやら知らないで付けているらしい。
ピンク色の蓮の花の上に妖精のようなかわいい女の子の人形が乗ったキーホルダーは、確かに彼の雰囲気には不似合いだったが、ゲームオタクなのだと言われたら納得できる気もして、どっちだろうと思ってしまう。
でもこの反応を見るかぎり「はすみん」が何かもわかっていないようだ。
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