第1章  再会

16/19

441人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「ええ。オンラインゲームのレアキャラで滅多に出てこないらしくて、ゲットするのがすごく難しいって妹が騒いでたんで。グッズもほとんど出ないし、限定だからなかなか買えないって言ってたんですよ」 「へえ、そうなんだ。レアキャラってことになったのか……」  何かもごもごと言って、それからそれを外すと亮真に渡してきた。 「妹さんに」 「え、でも」  手のひらに置かれたキーホルダーと目の前の怪しい男に視線をウロウロさせていると、彼が今までで一番はっきりした声で言った。 「それ、貰い物でとくに欲しかったとかじゃないので、本当にいいんです。こんな親切にしてもらってありがたかったから、お礼にどうぞ」  キャラ名も知らなかったようだから、貰い物と言うのは本当かも知れない。あっさりした態度から見ても、べつに惜しいと思っている様子はなさそうだ。  髪が邪魔で顔はよく見えないが、本気でくれるらしい。 「本当にいいんですか?」  念を押したらためらいなくうなずいたので、亮真はそのキーホルダーを受け取った。 「ありがとうございます。妹が喜びます」  その時、ポケットのスマホが震えた。 「あ、すいません、俺もう行きますね」 「いえ、どうもありがとうございました」  礼儀正しく礼を言う彼にかるく会釈して、亮真はスマホを取り出しながらその場を離れた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

441人が本棚に入れています
本棚に追加