第1章  再会

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「こういうのなんだっけ? ツルの恩返し的な? かさ地蔵的な?」 「なんだその、日本昔話的発想は」 「えーだって、お兄ちゃんてそういうこと多いじゃん。何かしたらお礼が貰えるみたいなこと。そういうキャラなのかなあ」  どんなキャラだよと思うが、それは確かだ。お使いに行ったらお菓子を貰ったり、農作業を手伝ったら野菜をもらえたりなんてことはしょっちゅうだ。  べつにそんなことを期待して手伝うわけではないが、亮真が親切にする分だけ相手からも親切が返ってくるような感じだ。 「でもそんな怪しそうな人によく声掛けたね」 「目の前で倒れそうになったら、そんなこと考えてられないだろ」 「えー、あたしなら職員さん呼びに行くなあ」 「お前はそれでいいんだ。女の子なんだから、見知らぬ男を支えたりするなよ? でも職員は呼んでやれ」  それを男女差別だとは思わない。実際、こんな田舎町であっても露出狂や声かけの事案は発生しているし、その被害者のほとんどは子供や女性だからだ。  もちろん今どきだから、男の子も安全とは言い切れないが。  あの彼はあのあと、無事に帰れたんだろうか。なんとなく気になって、退勤時間になってからホールに行ってみたけれど、彼の姿はもうなかった。  図書館も5時に閉館するので、冬の暗いホールには誰もいなかった。多分家に帰ったんだろうけど、気にはなっても名前も住所もわからない。
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