第1章  再会

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 母親が作ってくれた弁当を持って、今日はせっかくだから公園で食べようと役所を出た。すぐ隣が図書館でそこに児童館や地域の人が使える集会室などもあるせいか、公園は人が多かった。  桜のしたにシートを広げて、小さな子供と母親たちがピクニックをしている。老夫婦が散歩がてらゆっくり歩いていたり、よちよち歩きの幼児が鳩を追いかけていたりと平和そのものの光景だ。  小さな噴水がある池の周りを、幼稚園くらいの子供がぐるぐると自転車や三輪車で走り回っている。  それを横目で見ながら遊歩道をゆっくり抜けて行くが、桜並木の遊歩道のベンチはもう人で埋まっていた。みんなおにぎりやサンドイッチやおかしを食べたり、あるいはビールを片手に春のひと時を楽しんでいる。  弁当が入ったトートバッグを持った亮真はぐるりと遊歩道を回りながら桜を眺め、ベンチに空きがなかったので半周したところで考える。  どうしようかな。  地面に座って食べてもいいのだが、一応スラックスなのでそれは避けたい。  亮真はすこし歩いて、建物の裏側に回った。  市役所の職員たちが裏庭と呼んでいる場所だ。  表の公園に比べれば狭いスペースだし建物の陰になる位置になる上に、生垣があって見えづらいので人はほとんど来ないが、ここには大きな桜の木のしたにベンチがあってたいてい空いている。
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