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パーカー越しに触れた肩は薄くて手のひらに伝わる体の華奢なことに驚いた。いやこれが普通なのかな、ずっと水泳やってた俺の肩ががっしりしてるだけで。
彼がペットボトルを開けて飲み物を飲んだので、亮真は弁当の包みを開けた。毎朝、母と祖母が交代で作ってくれる弁当は、高校時代と同じ大きさでかなりのボリュームだ。
あまり運動しなくなったから、小さいものに買い直そうかなとふと思いつく。
ちらりと隣に目をやると、彼は顔をあお向けて下から桜を見ていた。建物の陰になるからだろう、公園の桜に比べてまだ五分咲きほどだ。
「ここは満開までまだありますね」
「そう、ですね」
男は亮真と同年代だろうか。華奢な体格とかわいらしい外見のせいで、年齢がわかりにくい。ひょっとしたら少し上なのかもしれない。
見知らぬ相手に戸惑って敬語にしたものか普通に話したものか迷っているようだ。さっきもごめんと言いかけてすみませんなんて言い直していた。真面目な人らしい。
「旅行ですか? ここらの人じゃないですよね」
「わかりますか?」
「言葉が違いますから」
イントネーションの違いで、彼が地元の人間じゃないのはすぐにわかった。
旅行、それとも転勤とかだろうか。田舎町なので転勤で来る人は滅多にないけれど。でもそれなら会社で仕事をしているはずの時間帯だ。
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