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極楽鳥花のすらりと長い茎を見ていると、私より背が高くなりはじめた頃の娘の姿を思い出した。娘はまだ中学二年生だったと思う。セーラー服姿で、学校で起きたことをあれこれとおしゃべりしてくれたものだ。あれから娘の背はぐんと伸びて、高校生になる頃には、私を見下ろせるようになった。あの時好きなようにさせてしまったのがよくなかったのだろうか?
極楽鳥花を見ているうちに、臍の奥あたりがちりちりと痛み、口の中が本当に苦くなったような気がした。
そして、そんなつもりはなかったのに、鋏に力を込めて極楽鳥花の茎を短く切ってしまった。小さく「あっ」と声を漏らすと、先生が私の側に来た。
「赤城さん、どうしましたか? あら、かなり短くしたんですね」
「ちょっと、手が滑ってしまって」
せっかく長い茎なのだから、長く使いたかったのか先生は首を傾げながら、あれこれとアドバイスをしてくれた。
このカルチャースクールの生け花教室に通い始めてもう六年ほどになる。十畳ほどのスペースに生徒は私を含めて八人程度だ。今私の隣に座っている舘林さんに誘われるがままに始めた習い事だった。毎週木曜日に花を生ける。まだ娘の頃にやっていた習い事を、一通りのことが終わったな。と思う頃に始めるというのは、少し気恥ずかしい気もしたけれど、いざ始めてみれば、娘の頃にもどったような懐かしい気持ちが持てた。
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