極楽鳥花

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「どうなのかしらって、舘林さん、パソコン教室になんて興味があったの?」 「嫁にね。孫の写真を送って欲しいって言ったら、いちいち送るのは面倒だからフェイスブックを見てくださいって言われたんだけど、あれってパソコンがいるんでしょう? 私機械は疎いから今までパソコンなんて触ったこともないのよ」  奥歯に力が入る。嫉妬でかあっと体が火照る。今までも舘林さんから『孫』の話題が出る度に動悸が激しくなったが、ここまで動揺したのは初めてだった。けれども、舘林さんに悪気がない事は分かりきっていたので、私は氷の溶け切ったアイスティーを一口飲んでから、ゆっくりと答えた。 「フェイスブック? パソコンなんてなくても平気よ。舘林さんのその携帯、スマートフォンにすればいいのよ」 「ええっ? そうなの?」  何故か舘林さんはバッグの中に入っていた自分の携帯を取り出して、ぱきりと開いて見せた。ベビーピンクの携帯は角の塗装がぐるりと剥げていて、私の記憶が正しければ、確か四年以上は使っているはずだ。待ち受けは当然舘林さんの初孫だ。ストラップが嫌でも目に入る。『孫』のお食い初めの記念にフォトスタジオで撮った写真がついているストラップだ。げんなりする気持ちを隠して私は努めて軽い調子で言った。
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