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「そうよ。専用のアプリがあるから、それを使えば簡単よ。それにしてもお嫁さんそんな事も教えずにフェイスブックを見ればいいだなんて、酷いわね」
「舞ちゃんに悪気はないのよ。やり方が分からないって私が、言いたくなかっただけなの。年寄り扱いされたくなくて」
まだ五十半ばで年寄り扱いが嫌だという気持ちはよく分かる。私だって必要に迫られなければスマートフォンなんか持たなかったはずだ。
舘林さんは私に聞きたいことだけあれこれ聞くとすぐにでも機種変更したくなったらしく、こうしちゃいられないとばかりに、せっかくさっき活けたお盆用のお花の花器を忘れていきそうになりながら、慌ただしく喫茶店を後にした。
もう少しゆっくりしていくと舘林さんに言った私は店員を呼び、さほど欲しくもないアイスティーを追加して、それがテーブルに置かれてから、そっと自分のスマートフォンを開いた。
最近は暇さえあればフェイスブックを開いている。SNSの中毒性がどうだとかそういうことではない。私は特に何も投稿していないし、不特定多数の誰かと交流しているわけでもない。私は生まれてからずっとこの街に住んでいて必要な人とはいつも直接つながっているからインターネット上でわざわざつながるべき人はほとんどいないのだ。
けれど私が今一番欲しているつながりは、このフェイスブックにしかない。
今私と娘を唯一、つないでいるのはアメリカ人の天才が若かりし頃につくったという、このサービスだけなのだ。
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