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私がきっぱりとそう言うと、小太りの職員は今度はおろおろとしながら、手元にある書類をガサガサし始めた。もっと言ってやらないと。そう思った瞬間、小太りの職員の後ろにいた、娘と同じ年頃のショートカットが印象的な、首がすらりと長い背の高い女の職員が私の前に立ってこう言った。
「今、何かの間違いだとこちらで証明することは不可能です」
「だったら、娘の現住所を今すぐ教えていただける?」
「致しかねます」
「どうして?」
「手続き上間違いなく受理されている案件ですので」
「母親が娘の住所を知らないっておかしいでしょう?」
女の職員は少し下を向いて、スッと息を吐いてから畳みかけるようにこう言った。
「もし、今、赤城さんに娘さんの住民票を閲覧できると言ってしまったら、自分の身や家族の身を守るためにこのお手続きをされている方たちが、逃げのびるべき『敵』とみなしている人物すべてに、私たちは彼らの居所を教えなくてはならなくなります。そんなことになったら、どうなるか想像していただけませんか?」
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