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その日はいつもと少し違った。
僕は、体が軽かった。
今日は歩けるかもしれない。
なのに、ユージは僕との散歩の時間に僕を置いて、出て行ってしまった。
部屋の中は暖かかったけど、僕の胸がすうと冷えた。
捨てられることには慣れたのに。
置いていかれることにはなれたのに。
何故、今、僕はこんなに辛いのだろう?
怖いのだろう?
ねえ、ユージ。
帰ってくるよね?
僕を放って行かないよね?
ねえ、ユージ!
ユージ!帰ってきて!早く!早く!!ユージ!!!
体が冷たい!寒いから!ユージ!
ユージ!ユージ!
気付けば、僕は泣き叫びながら、ユージの腕の中にいた。
「ごめんな、ごめんな」
そう言いながら、僕を抱きしめるユージの太い腕は、肩は、震えていた。
「お前、鳴けたんだな。俺を、呼んでくれたんだな」
そうだよ。僕はユージを呼んだんだ。
ユージだから呼んだんだ。
力を込めて、ユージに頭をこすりつけた。
ユージは、顔をくしゃくしゃにして笑った。
ユージの横には投げ出されたコンビニの袋。
僕は、初めてユージに感情を見せた。
そして、猫失格だな、と思った。
ねえ、ユージ。
散歩に行こう。
今日は、体が軽いから。
みゃうん
するとユージはまた、くしゃくしゃっと笑って言った。
「そうだな、散歩に行こう」
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