君と僕の終わらない物語

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外に出ると、いつもより寒かった。 いつもの公園は、少し靄がかかっていた。 ユージ、僕を下して。 今なら歩ける。 でも、僕の足は動かなかった。 どうして?こんなに体は軽いのに。 その時だった。 ふわり、白い何かが僕の前を舞った。 「雪だ…キジロー、雪だぞ」 ユージが嬉しそうに笑った。 ああ、そうか。 もう、そんなに時間は経ったのか。 だから、体が軽かったのか。 空を仰いだ。 次から次へと雪片は降ってきて、僕は空に吸い込まれそうだ。 ねえ、ユージ。 僕を見て。 ほら、歩けるから。 ユージは、目を丸くして、僕を見つめた。 そっと、僕はユージの足に寄り添った。 ねえ、ユージ。 ユージ、見た? ちゃんと僕の歩く姿を見た? ユージ、僕がユージと出会ってからもう一ヶ月が過ぎたよ。 僕は君と出会ってから、幸せだったよ。 終の栖を見つけた。 僕は、猫失格だ。 猫らしく一生を終えてやろうと思っていたのに、ユージのせいで猫らしい最期じゃなくなってしまった。 でも、これでいいんだ。 僕は、ユージに感謝する。 ありがとう、ユージ。 そっと、ユージが僕を抱き上げたのが分かった。 ユージの肩は、震えていた。 僕の乾いた鼻が濡れた。 暖かい水は、僕の顔をほとほとと叩いた。 そして、やっぱりユージの腕の中は暖かかった。 「雪は、キジローの神さまのかけらだったんだな」 ―――終わり―――
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