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「私は…そんな大層なものではありません。
このような、華やかな場に気後れしてしまいテラスに避難していた、だけで。」
だから月から降りてきた天女などという詩的な存在ではないのだ。そんな甘い瞳を向けてくるなと、続けたい気持ちをこらえる。
…窓から、この男にテラスで体力を回復しているところを見られていたのだろう。物憂げでもなんでもなくぼんやりしていたという言葉が正しいのだが。
なんというか、階段から落ちそうになった時本当に宙返りして着地という芸当をしなくてよかった、と彼は思った。
「気後れ?何故貴女のような方がされる必要があるんですか?」
「…こういった社交的で華やかな場に参加したのは、初めてです。」
ある意味真実を口にすると、男は不思議そうにその形の良い眉を寄せたので、レオは先手を打つことにした。
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