無茶振り魔女

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魔女の郷の頭領リンメイと魔女の(つるぎ)の長レオ。その部屋で会話するのはこの2人であった。 その日も彼は任務を聞くためにリンメイに部屋に呼び出されていた。 「我々は散々奴らに煮え湯を飲まされてきたわ。特に王家の者にはね。 何度裏切られたかしら 何度恩を仇で返されたからしら。 ようやく、その憂さを晴らす時が来るのよ。」 「はい」 「レオ、あなたにはまず、メレオンの王宮に潜入してもらうわ。」 「はい」 淡々と彼はかえしていく。 「やつらの内部を調べ暴き、守りが手薄なチャンスを探すのよ」 「はい」 「だから、10日後、あなたは女になって王宮に潜入してもらうわ」 「…はい?」 「大丈夫。私は魔女の郷の頭領よ?あなたを女にする魔法くらい使えるわ」 「そんなこと心配してません。 …潜入はやるとして、女になる必要がどこにあるんですか」 「そりゃああなた…ほら。 ねぇ? えーと、王宮の人間どもを油断させられるじゃない?可憐な女の子の方が」 「だったら最初から女を潜入させれば良いでしょう。魔女の(つるぎ)には何人も女がいるでしょう」 「それは…、ダメよ。メレオンに潜入なんて危険なことをできるのは長のあなたくらいのものよ」 「絶対あんたの趣味だろ」 「バレた?」 思わず口調がぶれるレオに対しリンメイが茶目っ気たっぷりに舌を出した。魔女はリンメイを含め皆快楽主義的な生き物。どう考えても面白がってこんなことを企画したのだ。 育ての親ということもありこの2人は長年の付き合い。母のようにも姉のようにも友人のようにも師匠のようにも接して来た彼は彼女のタチの悪さを身にしみて理解している。 ちょっとやそっとのことでは考えを改めないことも。嫌な予感をひしひしと感じて、レオの整った端正な顔立ちがぐっと歪んだ。
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