無茶振り魔女

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あれよあれよというまに話は進み、数日後本気でキレますよリンメイ様と青筋を立てて魔女の郷で逃走劇を繰り広げたのもむなしく、リンメイとその他複数の魔女に捕獲されてレンは魔法陣に放り込まれることとなったのだった。 女体化の魔法陣などというまことにろくでもない魔法陣だ。魔法陣がまばゆいまでの光を放ち、光がやんだ時にはもうそこにいるのは背のすらりと高い、切れ長の瞳をした青年ではなかった。 …とりあえず小さい。 「おい……………今すぐ戻せよ」 明らかに視界の高さも体の軽さも変化したことに気づき普段の敬語も忘れてレオはドスを効かせた声を出そうとしたが、可愛らしい女性の声が放たれるだけだった。 リンメイとその友人魔女らが口に手を当ててぷるぷると震えている。 「そんな怒ることないじゃない。ね?ね?」 「そうよそうよ。期待以上に可愛くてびっくりしちゃう…」 魔法陣から抜け出てリンメイに詰め寄ったものの、魔法にかけられた彼は完全に女性と化しており凄みも迫力もない。 焦茶色の髪や翡翠色の瞳の色は変わらないものの、肩まで届くゆるりとした髪や人形の如く長い睫毛は女性そのもの。身長は頭一つ小さくなり、戦闘に長けた無駄のない筋肉で引き締まっていたはずの四肢はほっそりと柔らかになり、女性的な丸みと可憐さを孕んでいる。 そして固く逞しい胸板は慎ましく膨らみ、肩は華奢で来ていた装束がはらりとはだけている。 目の形や鼻筋などはそう変わっているわけではなく元のレンの容姿の面影が色濃く残っており、双子の妹と形容できるだろうか。 完全に女性、ということを通り越して、なんとも魅力的な可愛らしい女性になったものである。そもそも元のレンが見目麗しく端正な顔立ちをしていたため、美女に化けることは予想はしていたもののあまりに可愛らしいので快楽主義的な魔女らが妙な気を起こしかけたのはいうまでもない。
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