無茶振り魔女

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魔女の郷は元々人がとても住めそうにない、草も生えていない崖だらけの土地に、魔女たちが力を駆使して森を作り闇に紛れるようにしてうまれた集落。200名前後の美しい魔女たちと、魔女らに拾われ、あるいは攫われて魔女の(つるぎ)として育てられた人間100名ほどがこの集落で生活している。 迫害された魔女らが辿り着いたこの集落は勿論そう活気に満ち溢れた場所ではない。元々魔女が静けさや闇を好む生き物というだけあり、ひっそりとしているのが普通だ。 しかし今は異例とも呼べるほど盛り上がっている。なぜなら魔女の(つるぎ)の長である、硬派で強いあのレオが女になったのだから。小さな集落ではすぐに噂が広まり、面白いこと好きの魔女やレオの部下たちがわらわらと集まってきた。 「長…?まじで長なんですか?」 「…」 「まじで1人で王国軍の群れを壊滅に追いやったこともある最強の男、長ですか…?双子の妹さんとかではなく?」 「やだ私より長の方が可愛いじゃないですか…」 「うるさい。リンメイ様にやられたんだ」 「デートしてください…」 「黙れ。見世物じゃないぞ」 不愉快極まり無いとばかりに顔を歪め、美女と化したレオを熱っぽい視線で見つめる部下たちを追い払う。 「リンメイ様、俺は戦う為の存在。こんな格好にさせられるのは遺憾です。今すぐ戻してください。」 「ダメよ。その姿で王国の王宮に潜入してもらうんだから」 「別に元の姿でも潜入くらいできます」 ちっちっち、と魔女が顔の前で人差し指を振った。そのいらっとくる所作に主従関係とはいえ手が出そうになったのは無理もないだろう。 「あなたはこれからとある名家の令嬢として王宮の式典に潜入してもらうことになってるのよ。もうその手筈も整えてる。だから女じゃなければダメなのよ」 「もうそこまで準備進んでるのかよ…」 「さ、これから式典までの間、女らしい仕草や言葉遣いを訓練しなきゃね。」 もう完全に楽しんでいることを隠そうともしていないようだ。るんるんと効果音がつきそうなほど上機嫌なリンメイ。普段は自身より高い背のレオが今は自身よりやや小柄になっており易々と肩を掴むことができる位置にあり、がしっと首根っこを捕まえるとリンメイの屋敷に引きずっていくのだった。
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