2.しめやかな愛を称えて

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公衆の面前、それも休日のテーマパークなんて人がごった返して訪れる場所の、特に隠れてもいない駐車場。 そこが、自分が今いる場所だってことを完全に忘れていた。 ひゅー、というやけに上手い口笛が聞こえて、驚いてぱっと周りを見ればそこには。 遠巻きに自分達を見つめてわやわやしている高校生くらいのグループに、やたらテンション高く何かを話しているこんがり焼けた肌の外国人二人組に、子供の目を覆いながら速足で立ち去る若い夫婦に……って。 「ぁ…あ………あああ……」 それだけ注目されている最中、自分がしていた行為といえば… 「~~~~~っうあああああああああ!!!」 瞬時に朔夜の手を引き、今なら世界記録も狙えると思うほど脱兎の如く逃げ出した俺の後ろで聞こえた「You make a dazzling couple!(キミ達は眩いばかりの素晴らしい夫婦になる)」という言葉と、「Thanks a lot.」なんて今まで会った英語の先生の誰よりも流暢な発音で呑気に答えている朔夜に本気で消えてしまいたくなった。 「――あれ?意味分かったの?」 「大学生舐めんじゃねぇぞバカ」 「体力は並み以下みたいだけどな」 100mくらい全力ダッシュした頃には早くもヘロっとしてきた俺の隣に並んで、余裕そうに憎まれ口を叩く朔夜。 そういえば大学生になってから特に運動という運動してなかったな、なんて思っている間にさっさと俺を抜かし、今度は俺が朔夜に手を引かれる形になってしまった。 「せっかくだから入場口までこのまま走ろうか」 「ぅえっ!?ちょ…冗談…っ」 大人なんて大抵皆運動不足だ、と安易に考えていたことを反省せざるを得なかった。  
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