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下から三番目、という先の言葉はつまり、部屋のグレードのことらしい。
そんなにも種類が多いことも驚きだけれど、そうではなく単純にここが『テーマパーク』の一環だから色々と趣向を凝らしているという訳だった。
とはいえ。
窓の外、景色の正面にテーマパークの目玉である観劇場が見えるこの部屋は、おいそれと泊まれるものじゃないということは確かで。
そして、部屋までわざわざ届けに来てくれた豪勢極まりない夕食ももちろん、そうそうお目にかかれないものだった。
「はいひなたちゃん、タオル」
「んー、じゃシャワー行ってくるー」
「おー」
手渡されたふわふわの真っ白いバスタオルを受け取り、そそくさとシャワールームへ。
…のだけれど。
「何で付いてくるの」
「あわよくばを狙って」
「は?」
「ああいや、一緒に入ろうと思って」
「嫌だよ最初のが本音なんだろ!」
何食わぬ顔で服を脱ぎだすこの恋人は一体どういう神経しているのだと頭を抱えたくなる。
別に一緒にお風呂に入るのが恥ずかしいとかそういう気持ちではなく、そもそも以前一緒に入ったこともあるのだからそれ自体に抵抗はない、けれど。
あわよくばという先の言葉が気になる。身の危険を感じる。
「ホテルに泊まるって時点で何となくでも想像できただろ、ほらバンザーイ」
「それはそうだけど…って脱がすなよ!」
「はいはい心の準備ね、いくらでも待つから」
「人の話を聞けーっ!!」
こんなやり取りをしながら、これも距離が縮まったからこその言い合いだとちょっと、ちょっとだけ、感じてしまった。
恋人らしい感じは相変わらずふやふやなままだけれど、やっぱりそういうのは俺達には向いていない、のかもしれない。
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