34人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「……そうよね」
軽々しく言い過ぎた。私もため息が出てしまう。
真由子が春から通うのは、美容専門学校。
化粧が好きな彼女は、将来メイクアップアーティストになりたいのだそうだ。普段から自分のメイクを研究するとともに、肌の労わり方の勉強もしていた。
食事、運動、お風呂に保湿ケア。思春期の子にニキビができるのはよくあることだが、ずっと自分の肌を大切にしてきた真由子にとっては一大事なのだろう。
真由子は鏡を見つめ続ける。
しかし私には、どうすることもできない。
「……もうすぐご飯できるからね。先にお風呂入っちゃいなさい」
私にできるのは、見守ることだけ。
これでいいのだろうか、と自分に問う。しかし答えなど出ない。
真由子は少しだけ笑顔を取り戻すと、小さく頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!