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廊下へ出ると、真由子が力無く歩いてきた。
ただいまの言葉も無く、ショルダーバッグを掛けたまま洗面所へと進む。その思い詰めた表情に、私は思わずその後を追った。
真由子は鏡の前で、じっと自分の顔を見つめていた。
「どうしたの?」
恐る恐る聞くと、今にも泣き出しそうな顔がこちらを向く。
「何でもない……」
そう言いながらも、がくりと項垂れる。何でもないという様子ではない。
過保護かなあと思いつつ真由子に近寄ると、彼女は諦めたように顎を指差した。
「……ニキビ?」
指の先を確かめてそう聞くと、真由子はいかにも残念そうに大きく息を吐く。私はつい、なんだと呟くと、真由子は激しく怒り出した。
「なんだじゃないよー! 私にとっては大事件なの!」
「大丈夫だよ、そのくらい。私の若い頃なんてもっと酷かった」
「イヤ! 私はイヤなの!」
叫びながら首を振る。そしてまた鏡との睨めっこを再開した。
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