38℃に想いを込めて

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   廊下へ出ると、真由子が力無く歩いてきた。  ただいまの言葉も無く、ショルダーバッグを掛けたまま洗面所へと進む。その思い詰めた表情に、私は思わずその後を追った。  真由子は鏡の前で、じっと自分の顔を見つめていた。 「どうしたの?」  恐る恐る聞くと、今にも泣き出しそうな顔がこちらを向く。 「何でもない……」  そう言いながらも、がくりと項垂れる。何でもないという様子ではない。  過保護かなあと思いつつ真由子に近寄ると、彼女は諦めたように顎を指差した。 「……ニキビ?」  指の先を確かめてそう聞くと、真由子はいかにも残念そうに大きく息を吐く。私はつい、なんだと呟くと、真由子は激しく怒り出した。 「なんだじゃないよー! 私にとっては大事件なの!」 「大丈夫だよ、そのくらい。私の若い頃なんてもっと酷かった」 「イヤ! 私はイヤなの!」  叫びながら首を振る。そしてまた鏡との睨めっこを再開した。  
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