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うたた寝から覚めたようにぴくっと体を震わせ、研次は暗闇で意識を取り戻した。
はっとして辺りを見回すが射し込む光はなく、一帯に広がる闇は夜が作り出したものなのか、視力によるものなのかはっきりしない。
手足は・・動く。
不具合はない。
そして生き地獄さながらだった身体中の痛みもない。それ故に記憶を辿る。
先程の出来事やその前の事すら夢だったのか暫(しばら)く判別がつかなかったが、手が4本ある感覚と自分の体勢が俯せでありながらも正面を向いている状態を鑑(かんが)みれば自分の今の姿がゴキブリであることは否めない。
現実を整理すると一瞬にして体を損壊させられた痛みと押し寄せる水、真知子の声の記憶が無意識に反芻される。
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