一方通行

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『さっきのは・・なんだ!?夢か!?俺は真知子に潰されて死んだんじゃなかったのか・・?』 虫として特別な転生を果たした研次に“死”はない。というより死んだとて魂に行き場はなく、再び何度でもゴキブリとしてその“生”がリセットされる。 研次はそれを薄々感じ取っていたが余計な煩いと恐怖を自分に植え付けたくはなかった。 やがて記憶の再生と共に自我の意識が取り戻され、徐々に自分の置かれた状況と認識が一致していく。 『・・それにしても選(よ)りに選って俺をゴキブリにさせるとは・・岐司は酷い奴だ!』 研次は憤りと無力感に襲われていた。しかし毒づいたとて彼にはその対象も資格もない。 そして先の出来事が夢だろうが幻だろうが先の痛みは記憶から離れない。だから今の自分の本題はそこではないのだ。 このままでは見つかれば常に死と隣り合わせ・・それも酷い殺され方であろうことだけが確定している。 虫である暮らしがマシなものであれば人間に戻れなくとも受け入れようかと目論んでいたが最早悠長に構えてはいられない。
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