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戦場に似合わない無邪気な声がしたと思うと、型の無い剣が嵐の如く暴れ狂う。その姿は返り血に塗れていた。
「朱循!」
「董亮、山賊になんぞ囲まれてお前らしくもない! 一気に突っ切るぞ!」
朱循に不意を突かれた山賊は混乱を極めている。二人はそれに乗じて草を刈るかのように彼らを薙ぎ倒し、辺りの山賊が根絶やしになるのはあっと言う間だった。韓栄は呆気にとられていた。
……強過ぎる。二人とも、おそらく今回より抜かれた護衛隊の中でも群を抜いている。この人達の有無は、戦の明暗を分ける。
……この先、彼らを失うような策を立てることは許されない。
「二人ともありがとう、お陰で助かりました」
「そのための護衛だろう」
「ったく面倒かけやがって」
董亮は何でもないように答え、朱循は若干楽しんでいた割に舌打ちをした。しかし二人は韓栄の顔を見てぎょっとした。董亮は切迫した声で言う。
「韓栄、顔が真っ青だ。疲れたのなら俺の馬に乗れ」
彼女は首を横に振った。
「大丈夫よ。丁洪将軍たちと合流しないといけないでしょう」
彼女は笑顔で押し切ろうとしたが董亮はしかし……と煮え切らない顔をする。しばらく朱循は黙って二人の様子を見ていたがやがて痺れを切らした。
「!」
朱循は強引に韓栄を馬から引っ張り出し自分の前に座らせる。韓栄は苛立ち紛れに不平を言う。
「何をするの?」
「うるせえ黙って座ってろ。今馬に乗ったお前の護衛は出来ん!」
「女だからと見くびらないで頂戴、大丈夫よ」
朱循が怒鳴る。
「今は女だとかそんな話はしてねぇよ! 崔に着く前に倒れられたら俺たちは何のために付いて来たかわからんだろ」
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