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韓栄の返事は既になかった。彼女は朱循にもたれかかり失神していた。二人は驚いてしばらく無言でいたがやがて朱循が面倒くさそうに呟いた。
「言わんこっちゃない」
「かなり消耗したんだろうな」
董亮は韓栄の馬の手綱を引き寄せ心配そうに彼女の顔を覗きこむ。
「しかし、くそ意地っ張りだな!」
「周りから認められてないからだろう」
董亮の指摘に朱循は決まり悪そうに顔を顰める。
「言い過ぎたのは悪かったよ! だが結果も出さん奴を認められる訳ねーだろ」
「お前の気持ちもわかるが……まあいいか、彼女を……頼んだぞ」
董亮はぶっきらぼうに言うと韓栄の馬を引きさっさと歩き始めた。
「ちょっと待てよ! 何だよ急にムスッとしやがって!」
朱循は慌てて追いかける。
「疲れただけだ」
董亮は余計に機嫌悪そうな顔をして早足になった。
その後韓栄の目が覚めたのは日が暮れてからである。
「ん……」
陣営の中に横たえられているのに気付き、上体を起こして辺りを見渡す。
「気付いたか」
すぐ横で胡坐をかいていた朱循がそっけなく問う。
「山賊は……」
「全滅にしたよ。あんなのお前が出る幕じゃねえ」
今の韓栄には言い返す気力がなかった。
「そうね、足手まといで悪かったわ」
朱循は彼女のしおらしげな反応に少し慌てた。
「違えよ別にお前の策などなくても追い払えるって言ったんだよ! 大体お前一人いたところで苦戦する相手でもねぇし!」
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