二章

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朱循は頭の後ろを掻きながら言葉を選ぶ。 「俺はまだ、お前を認めた訳じゃないが……ただのでしゃばり女じゃないことはわかったよ。だから護衛くらいしてやる。せいぜい結果は出すことだな!」 韓栄は朱循をまじまじと見つめた。 「な、なんだよ!」 「いえ、どういう風の吹き回しかしらと思って」 「なんだと! 仕方ねーだろ董亮が怒るんだから!」 「ふふ」 韓栄がころころと笑い声をあげると、朱循はつられて照れくさそうに少しだけ笑った。 「貴方でも笑うのね」 「年上をからかうな! それだけ減らず口なら俺は知らん!」 朱循は怒って天幕を出て行ってしまった。 そうだ、董亮にお礼を言いに行こう。 韓栄は天幕を出て董亮の姿を探しに行った。 董亮は夜の見張りをしているところだった。韓栄は彼の側に歩み寄る。 「董亮!」 「韓栄、もう体調はいいのか?」 「えぇ、お陰様で。その節はありがとう」  韓栄は恭しく辞儀をした。 「構わないさ、あのくらい」 「そうだわ、倒れている間朱循がずっと面倒見ていてくれたみたい。何だかんだで優しいのね」 「……そうだな」  董亮の顔が少し曇る。韓栄は不思議そうに董亮を見上げる。 「どうかした?」 「何故?」 「いえ、顔を少し顰めたから」 「何? それはすまない」  彼は無自覚だったらしく慌てて眉間の皺を伸ばした。 
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