二章

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その後は特に危険に晒されるような事態は起こらず、無事に崔の王都に到着することができた。 崔の王都である華浪(かろう)は国の中心だけあって非常に栄えており、城下の店には国の特産品や高級品が揃い花が咲いたように艶やかだった。 「さすが王都だな」 董亮が感嘆の目を向ける。 「桂都(けいと)も負けてはいないけれど、経済面が上手く回っているようね。この様子なら軍備の備えも期待できそうだし、味方にできれば心強いわ」 「あとはお前次第だな」 「ええ、任せてちょうだい」 韓栄は不敵に微笑んだ。 「失敗したら崔に捨てて帰るからな」  朱循が突然憎まれ口を叩く。 「なら成功したら私に一生服従してもらうわよ」 「はぁ?」 「嘘よ」 上から目線の笑みを向ける韓栄に何度目かの「可愛げがねぇ」を吐く。しかし今までのような嫌悪の表情は消え、内心言い合いのような会話を楽しんでいるようだった。実際、少しずつだが二人の間で他愛ない会話も増えていた。 その様子を、董亮はじっと見つめていた。 「本当に仲良くなったな」 仏頂面で呟く言葉は、どこか刺々しい。 「はぁ? どこがだよ!」 朱循が先ほど韓栄に怒鳴った勢いで否定する。 「なったじゃないか」 董亮は吐き捨てるように言うとさっさと先に行ってしまった。 「何だあいつ、最近機嫌悪ぃな」 「そうね、珍しい」   
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