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当の本人ですら自分の感情がよくわかっていなかった。
朱循と楽しそうに言い合いをしてる韓栄を見ると何だか面白くない。というか、あんな子供の様な無邪気な顔、出来たのか。
「董亮?」
突然韓栄の声がして董亮は肩をびくつかせる。仕事柄人の気配を察するのは慣れているはずなのに。
「驚かせたかしら? ごめんなさい。体調でも悪いのかしらと思って」
「? 普通だが何故」
「そうかしら、朱循も心配していたけれど」
小首を傾げる韓栄に途端に申し訳なくなる。朱循には誰のせいで、とも思ったが別に彼は悪いことはしていない。
「心配させたなら、すまない。少し疲れているのかもな」
董亮はぎこちなく笑顔を作る。すると、韓栄がそっと董亮の額に小さな手の平を当てる。
「?!」
董亮は激しく動揺した。
な、何をするんだこの女は! 心臓が口から飛び出るじゃないか!
「平熱ね」
韓栄は気にも留めずに言う。董亮はどもりながら彼女に文句を言う。
「いいい、いきなり驚くだろう!」
「そこまで驚く事ではないわ」
そうなのか? 否、俺は間違ってない。
董亮は心臓を抑えながら、韓栄を咎める。
「年頃の女が男に無防備に触れるのは迂闊ではないか?」
「は……?」
韓栄はきょとんとした顔をした後、おかしそうに笑い転げる。
「私が董亮の額に触れるのがどうして迂闊なの? 董亮は私に危害を与えないでしょう」
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