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「それはそうだが……」
俺を本当に信頼しているのか、其れとも懐柔しているのだろうか。反応に迷う董亮を前に韓栄は悠然と微笑む。
「私は軍師よ。人を見る目には自信があるわ」
彼女なりに、俺が無害である根拠はあるのだろうが……あんまり安心してくれると少し複雑だな。
少し、懲らしめてやろうか。
董亮の骨ばった手がそっと韓栄の頭に触れた。
「!?」
韓栄は思わぬ硬い感触に一瞬身を固め、されるがまま董亮を見つめる。
「仕返しだ」
董亮は囁くように言うと、手を離し照れたように顔を背けた。
何故かしら、心臓の音が体中に響き渡る。ひょっとして、先程私は随分心臓に悪い事をしたのかしら。
「……」
董亮の顔を見ると余計に心臓の音が増す。董亮は鼻で笑いながら韓栄を見下ろす。
「ほら、いきなり触れられると驚くだろう?」
「お、驚いてないわ!」
韓栄は董亮に食らいつく勢いで否定する。
解らない。頭に触れられたくらいで心臓が高鳴るなんて……男性の手は、心臓に悪いのね。
女軍師がその感情の名を知るのは、まだ先の話である。
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