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華浪に到着して一刻、ようやく華浪城の門前に着く。厳つい顔の門番が槍を片手に待機していた。
「何者だ?」
「李国の者だ。そちらのご主君と交渉をするために来た」
丁洪が事前に届いた崔国君主の署名を書いた通行手形を見せると門番はそのまま頷く。
「話は聞いている。交渉するのは誰だ」
「こちらの女だ」
韓栄が頭を下げる。門番は我が目を疑うような顔をする。
「は……? 失礼だが、聞き間違えたか」
「そう思うのも無理はないが……」
丁洪も苦々しい顔をする。門番は韓栄の姿を不躾に見回すと耳元で囁く。
「色仕掛けが通じる我が君ではないぞ」
様子を見ていた董亮、朱循が剣に手をかける。内容こそ聞こえていないが、嫌な空気は感じ取ったようだ。
「!?」
韓栄は突然門番と距離を詰め、背伸びして赤面した彼の耳元で甘く囁く。
「……貴方がご君主なら、それでもよかったかしら」
韓栄はムッとした門番に挑むような眼で微笑した。
「あいつの挑発なんざ10年早かったな。口だけは達者なんだよ」
朱循は剣を納め揶揄う調子で言った。門番がカッとさらに顔を朱に染める。
「おい」
董亮が門番の腕を掴む。彼はその力の強さに驚き肩をビクつかせる。董亮は無表情で門番の耳に口を寄せる。
「何を言ったのかは知らんが……彼女が口で対処できる範囲を超えるならば……少々痛い目にあってもらうからな」
董亮は凍て付くような低く冷たい声で脅しをかける。門番は董亮の静かな怒りを体感し、たちまち真っ青になる。
「では」
董亮は門番を睨みつけたまま門をくぐる。最早彼には先程の余裕はなく門の隅にへたり込み震え上がった。
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