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城内は門番とは違い慇懃な態度の官人が中に案内してくれた。
綺麗に磨きたてられた廊下を歩き、君主の待つ室の前にたどり着く。
「恐れ入りますがここからは、韓栄様お一人でお願い致します」
丁洪は眉を顰める。さすがによその国で女一人を目の届かないところにやるのは危険だ。
「理由は?」
「顧飛様の仰せなのでご了承願います」
官人は表情を変えず淡白に答える。李国の一同は即座に理解した。試されているのだ。
「いくらなんでもそれは……」
「承知致しました」
韓栄は丁洪の言葉を遮る。
「しかし」
「別に護衛が必要な事態はありません。他国の武官が控えていれば顧飛様も気を遣われてしまうでしょう」
韓栄はわざと聞えよがしに言う。そして挑戦的な笑顔を向けて官人に向き直る。
「お通し願います」
「かしこまりました」
官人は感情のない声で一礼する。
「それでは行ってきますね」
韓栄は堂々とした足取りで、一歩一歩靴音を鳴らした。
「お連れの皆様は別室にてお待ち下さい」
どこから出てきたのか、別の官人が護衛の一行に付いて来るよう促す。一同は腑に落ちない顔で、韓栄とは全く別の方向に歩みを進めた。
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