二章

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「こちらに御座います」 仏頂面の官人がやけに威圧感のある大きな扉の前で止まる。 「ありがとうございます」 韓栄が愛想よく会釈すると、彼も表情を変えず会釈を返した。 「顧飛様、お連れしました」 官人が扉に向かって少し声を張る。 「通せ」 低いが澄んだ声が返る。まだ若いのだろう。 「失礼します」 官人は丁寧に扉を開ける。すると韓栄の正面の玉座に大柄の男が鎮座していた。彼は高い所から目線を降ろすように彼女を睥睨する。 「どうぞ」 官人の声で彼女は足を踏み出す。そして目の前の男に負けないような強気な視線をぶつけながら、丁寧な仕草で一礼する。 「お初にお目にかかります。李国の使者として参りました。韓栄です。このたびは謁見の機会を頂き、心よりお礼申し上げます」 「遠いところからご苦労。本当に女だとはな。その華奢な体で長旅は疲れたろう」 顧飛は韓栄を一瞥し社交辞令を向ける。高貴で端正な顔立ちだが、陽彪のように人好きのする様子は感じられない。つりあがった瞳は狡猾そうで、一筋縄ではいかない男だと一目でわかる。 「して、何の話をしに来た」 韓栄は臆することなく口を開く。 「まず用件から申し上げます。我が国との同盟を結んでいただきたいのです」 「ほう」 顧飛はわざとらしく眉を吊り上げる。
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