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「こちらに御座います」
仏頂面の官人がやけに威圧感のある大きな扉の前で止まる。
「ありがとうございます」
韓栄が愛想よく会釈すると、彼も表情を変えず会釈を返した。
「顧飛様、お連れしました」
官人が扉に向かって少し声を張る。
「通せ」
低いが澄んだ声が返る。まだ若いのだろう。
「失礼します」
官人は丁寧に扉を開ける。すると韓栄の正面の玉座に大柄の男が鎮座していた。彼は高い所から目線を降ろすように彼女を睥睨する。
「どうぞ」
官人の声で彼女は足を踏み出す。そして目の前の男に負けないような強気な視線をぶつけながら、丁寧な仕草で一礼する。
「お初にお目にかかります。李国の使者として参りました。韓栄です。このたびは謁見の機会を頂き、心よりお礼申し上げます」
「遠いところからご苦労。本当に女だとはな。その華奢な体で長旅は疲れたろう」
顧飛は韓栄を一瞥し社交辞令を向ける。高貴で端正な顔立ちだが、陽彪のように人好きのする様子は感じられない。つりあがった瞳は狡猾そうで、一筋縄ではいかない男だと一目でわかる。
「して、何の話をしに来た」
韓栄は臆することなく口を開く。
「まず用件から申し上げます。我が国との同盟を結んでいただきたいのです」
「ほう」
顧飛はわざとらしく眉を吊り上げる。
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