二章

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「目的を聞こうか」 韓栄は顧飛の顔を真正面に見据える。 「呂という国が我が国李の隣に御座います。勢力拡大を目指す野心的性格故に、近々我が国や御国へ侵攻に及ぶのは確実です。しかし残念な話我が国の戦力は呂に劣ります。しかし御国と力を併せたならば、呂にも対抗できる力を得ることができます。そこで御国との結びつきを深めさせて頂きたく、今回参上致しました。失礼ながら御国にとっても呂の侵攻は脅威となるはずです。どうか、前向きなご検討を」 顧飛は韓栄の話を気だるそうに頬杖をつきながら黙って聞いていた。そして重い腰を上げるように口を開く。 「我が国の武力が呂のそれと劣る、との根拠はあるのか? 聞き捨てならんが」 怒っている、というより試すような目をしている。 「……あくまでこちらで得た情報ですが、人口は御国に少し劣るものの成人男性に数年の兵役義務を課す法律があるらしく、人口に対する兵士の割合が高いです。反面、御国は文化の発展面に比重が高くありますので、その分兵士の頭数は減りましょう」 「兵の数が勝敗の全てではあるまい」 「呂は有数の鉄の名産地です。また最近馬の名産地もいくつか征服しています。兵器を作る資源が極めて豊富です」 「なるほどな」 顧飛は韓栄の発言を眉一つ動かさず聞いている。とうに承知の事実なのであろう。
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