二章

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「しかし、それならば別にお前の国と同盟を組む必要はない」 韓栄はぐっと息を呑む。 「……と言いますと」 「お前の国が我が国の支配下に入ればいいだけのことだ。お前の言う通り呂に対抗し得る戦力が手に入る、それも誰の血も流すことなく」 恐れていた言葉が表れる。やはり一筋縄ではいかないらしい。韓栄は様子を窺い相手の出方を見る。 「……無理だと言ったら?」 「武力行使するのみだ」 顧飛は平然と即答する。しかしここで折れてしまっては護衛を付けてまで来た意味がない。 「……うちと戦ったところで特に御国に益はありません。むしろ戦力を浪費したところを呂につけ込まれ征服されるのが関の山でしょう」 「それでもお前の国と同盟を組むのは(はばか)られるな。古くからの因縁もある、あっさり仲直りとあれば先祖らに顔向けできんよ」 「それは、感情論ですね」 「何?」 顧飛は目の色を変える。韓栄は冷静さを失わず淡々と言葉を紡ぐ。 「過去あったことを水に流すのは難しいです。しかし既に亡きご先祖を(おもんばか)ったところで御国に利益はありません。むしろくだらない義理に囚われて国を亡くしてご先祖に顔向けできますか?」 顧飛は身を乗り出す。 「ずいぶんなことを言ってくれる」 「そもそも顧飛様は先祖を偲ぶような性格ではないでしょう、わざわざ因縁ある李国の人間を迎え入れて、ここまで話を聞いてくださいました」 韓栄は言い切ると挑むように口角を上げる。すると顧飛は呼応するように愉快そうな笑みを浮かべる。
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