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「普通の人間が来るとは思ってなかったが、俺にここまで言う奴が来るとは面白い。同盟の話自体もうちにとって悪い話ではない。しかし……」
顧飛はなぜか椅子から下りて韓栄に近寄る。笑みを消して身を硬くする韓栄には構わず彼女の顎をすくいあげる。
「少々もの足らんな。韓栄と言ったか、中々美しいな。一晩俺の夜伽を務めれば、前向きな返事をしてやってもいいが……」
意地の悪そうな表情、しかし妙に色気があり油断すると呑み込まれそうになる。韓栄は顎を掴まれたまま顧飛を睨みつけ、冷ややかな声で言った。
「門番殿からは色仕掛けで動く君主ではないと聞いたのだけど」
顧飛は手を放さない。
「買い被りだ、君主である前に俺も男なんだが」
「臣下の理想の存在で在り続けるのも君主の仕事では?」
急に刺々しい態度をとる韓栄を眺めながら、ついに顧飛は声を上げて笑い出す。
「そう怒るな、いいだろう。同盟の件、お前に免じて承諾してやる、二日待て。向こうに持って帰る書面を用意しよう」
「……ありがとうございます」
韓栄は言葉だけの謝辞を口にして顧飛の手を無理やり引き剥がす。
「その攻撃的な目つきもそそるな」
「それはどうも」
韓栄は踵を返して礼もせず部屋を後にした。
気に入らないけれど……話はわかる男でよかったわ。
彼女は不遜な顧飛に苛立ちを感じながらも、内心胸を撫で下ろした。
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