二章

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別室で待たされている護衛たちは、ツカツカと不機嫌そうな靴音を立てながら戻ってきた韓栄を見て「やっぱり駄目だったか」とため息をついた。 韓栄はにこりと微笑むと淡々と告げる。 「二日ほど待つようにとのことです。同盟は無事成立しました」 辺りが水を打ったように静かになる。ほとんどの人間が信じられないとでもいうように目を白黒させる。 初めに声を出したのは朱循だった。 「本当か! やるじゃねぇか見直したぞ!」 その一言が契機となり部屋中が安堵と喜びに沸いた。 「よくやったな! ありがとう!」 「韓蓋殿の娘というのは本当だったんだな! 来た甲斐があった!」 喜びのあまり韓栄の肩をばしばしと叩く者もいる。さすがの韓栄も「お役に立てて光栄です」と照れくさそうに少し頬を赤らめた。 「韓栄」 皆に囲まれた彼女に董亮が声をかける。韓栄は「あら董亮!」と晴れやかな顔を見せる。彼は一言だけ告げる。 「やってくれると思ってた」 「当然よ……ありがとう」 それ以上の言葉はなく、ただ二人は微笑みあう。 「祝杯だ!」 二人の和やかな空気は一人の声に打ち消され、その後も祭りのような明るい喧騒が朝まで続いた。
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