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翌日の昼を過ぎた頃、韓栄はゆっくりと目を開けて起き上がった。
普段は概ね早起きの彼女だが、朝まで続いた祝宴に疲れきっており起きられなかったのだ。彼女はまだ眠たそうに欠伸をしながら、服を着替え身支度をする。
今日は特にすることもないし、どうしようかしら……。
顧飛が同盟受諾の文書を用意してくれるのは明日なので実質休みである。周りの皆は観光にでも出かけただろうか。
「韓栄様、起きられましたか?」
宿の娘が控えめそうに部屋の外から呼びかける。
「何です?」
「お客様です、董亮様と言えばわかると」
「董亮? 通してもらえるかしら」
「はーい」
あどけない返事と同時に董亮が部屋に入る。
「入るぞ」
「どうぞ」
董亮はいつもの重そうな鎧ではなく落ち着いた紺の上衣を着ていた。若いのだからもう少し派手な色を着ても映えそうなものだが、堅実な彼らしい格好である。
「体調は問題ないか? 結構飲まされていたようだが」
「大丈夫よ、ありがとう」
董亮は彼女の元気そうな様子を見ると安心したように息を付く。
「ところで韓栄、よかったらこれからちょっと一緒に街を観てみないか? せっかく遠い所まで来たからな」
韓栄としてもちょうど時間を持て余していた所だったのでちょうどいい誘いだった。
「そうね、せっかく来たんだし。ご一緒させていただくわ」
「よし、それなら早速行こうか」
董亮は待ちきれないとでも言いたげに韓栄の腕を掴み部屋の外に連れ出した。
機嫌が良いのかしら? 韓栄は少し高鳴る胸を押さえ、腕を掴まれたまま彼に歩調を合わせた。
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