二章

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昼の城下は人通りも多く賑やかで、歩くだけで気分も浮ついてしまう。 「そういえば朱循は? 同じ部屋に泊まっていなかった?」 「寝ていたから置いてきた。しこたま飲んでいたからな」 いびきも煩いし敵わん、と董亮は愚痴を漏らした。 「ふふ、あら綺麗な飴細工だわ」 「欲しいのか?」 「いいえ、甘いものは苦手なの。珍しくてつい目に留まったの」 「甘いものは苦手か、珍しいな」 「そう?」 「女は大抵甘味を好むだろう」 「偏見よ、でもその方が確かに可愛らしいわね」 韓栄は少し自嘲するように笑う。董亮は失言だったろうかと内心焦る。 肌は陶器のように白く目鼻立ちの整った美しい顔立ちだが、可愛いと言われる容姿ではない。知的だが硬質な雰囲気がどうしても人を遠ざけてしまう。 二人が飴細工を眺めていると、恋人同士らしき若い二人が店を訪れた。男が飴を買って手渡すと、女は「ありがとう!」と嬉しそうに微笑み美味しそうに飴を口に含んだ。男は愛おしそうに女の頭を撫で、手を繋いでその場を後にした。それを見て韓栄は寂しげに呟く。 「昔から、愛嬌がないと言われるのよ。あんな風に女の子らしく振舞うことができなくて」 確かに、彼女からは感情をあの娘のように素直に表現する姿は想像できない。 「羨ましいのか」 「少しね」 董亮もそれ程感情豊かではないが、むしろ官人としてそうあるべきだと自身で思っていたのであまりそのような事で悩んだ事はない。しかし女は少し勝手が違うのかもしれない。 「しかし、お前は感情を排し冷静に物事を考えられるだろう? 只の女にはないお前だけの長所だ」 韓栄の胸は大きく跳ねる。 「でも董亮は……感情豊かな女を可愛いと思うでしょう?」 董亮は困った様に笑みを浮かべる。 「俺は……実は感情的な人間は苦手なんだ。理屈が読めないからな。お前のような女の方が良い」 韓栄の身体に熱が走る。 董亮が可愛い女より、私の方がいいというのは仕事の都合上のことに違いない。分かっているのにそんなことで何故こんなに嬉しいのかしら? 飛び跳ねたい衝動に駆られる、でも感情豊かな女は苦手なら困らせてしまう。
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