二章

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「それではこの書面、確かに預けたぞ。陽彪殿に届けてもらおう」 次の日、韓栄は顧飛から直々に同盟受諾の書面を受け取る。彼女は顧飛に向かって恭しく頭を下げる。 「確かに拝受しました。感謝致します。この書状は必ず、陽彪様にお届け致します」 「近々、陽彪殿をうちに招こう。食事でも持て成そうじゃないか」 顧飛は韓栄に笑みを向ける。 「それはぜひ。陽彪様も喜ばれることでしょう」 韓栄は彼の社交辞令に無難な返事をする。 すると顧飛はいきなり韓栄の腕を掴み耳元に口を寄せる。 「……貴殿にも是非、同席を願おう」 ……どういうつもりかしら。 韓栄は顔を顰めて即座にぐいと顧飛の体を押しやる。 「耳元で囁く内容の話かしら?」 「より記憶に残るだろう?」 顧飛は冷ややかな韓栄の態度は気に留めず余裕気に微笑んだままである。韓栄は針で刺すような目で彼を睨みつける。 「また軍議で会いましょう」 ……やはり気に入らない。 韓栄はくるっと背を向け大股で室を後にした。 「……やはり興味を引く女だ」 「よっぽど気に入られた様ですね」 一緒に部屋にいた小間使いが言う。 「あぁ、面白いじゃないか?」 「女の官人だからですか?」 「それもあるけどな、俺の妾にどうかな?」 「私はお薦め出来かねますね、囲ったら噛まれそうじゃないですか」 冗談じゃない! と渋い顔をする小間使いに顧飛は「確かにお前じゃ扱いきれんな」と笑った。
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