二章

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張明とのやり取りを傍観していた婁舜は韓栄の頭に紐飾りが付いていることに気付く。 「韓栄、これ買ったの?」 「いいえ」 韓栄は首を横に振る。 「ははぁ、さては男にもらったな、誰だい?」 韓栄は董亮に贈ってもらった際のことを思い出す。 おかしいわ。普通に董亮と答えればいいはずなのに、なんとなく口がむず痒い。 「婁舜殿には関係がないことです」 彼女は目線を反らしてぶっきらぼうに言う。 婁舜の顔の口角がだんだん上がっていく。 「董亮でしょ?」 彼女はつーんとしたままである。しかし否定はしない。 「髪飾り付けるなら僕も買ってあげるよ? 同盟締結のお祝いに」 「結構です。これを気に入っているので」 「へえー、だってさ董亮」 「!」 韓栄がしまった! というような顔で口元を押さえる。しかし辺りを見回しても董亮はいない。 「嘘だよ、やっぱり董亮か。こんなのに引っかかるなんて、丞相に期待されてるとはいえ君もまだまだだね」 韓栄は殺意がこもった目で、したり顔の婁舜を睨みつける。 「婁舜殿はそんなことばかり言ってるからいつも女性に振られるんですよ」 「振られたこと無いけどねぇ」 韓栄は負け惜しみに言い捨てるとさっさと城内に入ってしまった。婁舜は苦笑した。 もう少し、性格が素直ならば……理知的な立ち振る舞いのせいで一見大人びてみえるが、案外幼い。 だから気付かない。認められない。芽生え始めた感情が、何であるか。
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