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三章
崔との同盟を結んで二週間が経とうとしていた。
かつての敵対国との同盟締結で一目置かれたのか、韓栄は少しだが周りと打ち解け、董亮や朱循以外に友人と呼べる者も数人できた。
その日の仕事が終わり帰り支度をしていると、韓栄は一人の同僚に呼び止められた。董亮と朱循の同僚で最近少し話すようになった文官の李延だ。財務の仕事に関わっている。
「韓栄、今日の夜空いているか?」
「? ええ、空いているけど」
「じゃあ飲みにいかないか? 朱循や董亮も来るんだ」
韓栄は言葉を失う。ぽかんとした彼女に、誘いをかけた李延はいけないことを言ったかと困惑している。
「行っておいでよ」
婁舜が笑顔で言う。
「いや、迷惑だったら気を遣わなくても……」
「迷惑じゃないもんね、飲みに誘われたの初めてだから嬉しくて言葉が出なかったんだもんね」
韓栄は横目で婁舜を睨む。そして李延にぎこちない返事をする。
「……行くわ」
「よかった! じゃあ楽しみにしてるからな」
彼は笑顔を見せるとそのまま韓栄と約束を取り付けて去っていった。婁舜は韓栄ににやけた顔で言う。
「楽しみにしてるってさ、韓栄が来るのを」
「社交辞令でしょう」
韓栄はぷいっとそっぽを向いてそそくさと帰宅してしまった。
いつもは明日の準備だかなんだかで残業して帰るのに。
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