三章

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手当たり次第に酒を空にする朱循をよそに和やかな談笑は続いた。 「貴女は以外に話しやすいよな。初めて見たときはとっつきにくそうな女が来たと思ったが」 「よく言われるけど、別に人嫌いじゃないわ」 韓栄は普通にころころと笑う。 「第一印象が冷たく見えるからな」 「そういう董亮も愛想が貧困だろう、固いし」 「そんなことはないだろう」 董亮が少しムッとした顔をする。李延は「いつも認めないよな」と苦笑する。そしてふと壁の時計をみやる。 「おっと、そろそろ帰らないといけないな」 「なんだよ李延、まだいいだろう」 顔を真っ赤にした朱循が李延の肩に手を回し絡む。 「いやいや、妻が怒るんだよ」 「あら、奥さんがいたの?」 「あぁ、子どもも五つになるんだ」 「お前は結構早かったよな」 「お前らが遅いんだよ、そろそろ縁談の話でもないのか」 「うるせーよ!」 朱循が李延の肩を強打する。李延は呻き声をあげながらも韓栄に向き合い冗談めいた口調で言う。 「何故かは知らないがこいつらどうも縁談とか色恋に縁がないんだよな、もう二十三になるんだがな。韓栄どっちか何とかしてやれないか」 「なっ、そういう冗談はよせ!」 董亮が突然バンっと音を立てて机を叩く。先ほどは素面だったにも関わらず急に顔を紅潮させ、明らかに狼狽し始める。隣の韓栄と目が合うとはっと我に返り、ばつが悪そうに目を反らす。 「俺はもっと可愛らしい女がいいなー、俺に対して優しくて、嫌味とか言わない女ー」 「それは難題ね」 「何い!」 「韓栄は、どういう男がいいんだ?」
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