序章

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……なんだか悪い気がしない。 「ありがとう、董亮殿。この韓栄、貴方のご期待以上の活躍をして見せます」 「……」 先程から表情がほぼ動かなかった董亮が刮目(かつもく)したまま固まる。 「何か?」 「いや、別に」 韓栄が尋ねると董亮はふいと顔を背けた。そして婁舜のもとに戻ると彼は驚いた顔で二人を迎える。 「おや? 董亮じゃないか、どうしたの?」 「面識があったんですか?」 「同郷なんだ」 「そうなんですか、彼に手伝っていただきました」 「あ、本当だ、悪いねこんなに多いと思わなくて。二人ともありがとう」 「いえ、それでは仕事に戻りますね」 婁舜は韓栄の足取りが少し軽いことに気付き思わず呟く。 「韓栄の機嫌がいい……」 「そうですか? 私は初対面なのでよくわかりませんが……」 董亮は「失礼します」と言ってそそくさと去っていった。 婁舜はクスリと笑いながら一人呟く。 「……何かあったな」 董亮は早足でその場を後にし、韓栄の顔を思い出して赤面した。 あの時、確かに彼女のほおが桃に染まり小さな紅い唇が綻んだ。何だあれは……華が開くような、艶やかな。
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