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「ああ、まあ年がら年中そんなもんよ」
そういうとまた男は大笑いをしました。
まるで野武士です。
実際に見たことはありませんが。
しかし僕はこの荒々しい男が兼ね備える自意識の高さと、ツレもなく一人でずっと旅をしているその男が、酷く哀れに感じられました。
初めての感覚です。
僕は大人を見ると、ついぞ脳が「尊敬しなければいけない」という勝手な指令を出して、たとえ内心ばかにしていても、表面上は取り繕っているように振る舞うのですが、なぜだかこの野武士(最後までこの男の名前はわかりませんでしたが、なんだか「男」と呼び続けるのも失礼なように思われるので、以後こういう風に呼びたいと思います)には尊敬の念を一切感じ取ることができず、しかしそれは決して失礼なものではなく、ある種「親近感」のようなものに思われ、気づけば僕は彼の方に体を向けていました。
「さみしくないのですか?」
それは野武士の一人旅について尋ねた言葉であったはずなのに、なぜだかその疑問がブーメランがごとく帰ってきたような気がした。
正直何泊するかなど決めていませんでしたが、この調子ならとっととで切り上げてしまおうと思っていたほどです、独り身がさみしくないわけがありません。
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