勇気の旅人

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都会でなんとかやっていけたのだって、否が応でも知り合いなどと言葉を交わしたり、行事に参加していからであり、いざ頼れるものが何一つないこの地に来てしまいますと、孤独が一層酷く感じられるです。 「それはないな、新しい地は頼れるものがないからこそ必死になる、だから面白いものと出会えるし、安いプライドだって捨てされる」 けれどそんな僕の思考とは裏腹に、男は豪快に笑いながら、孤独を肯定的に捉えるのでした。 さらに男はこう続けます。 「自分の馴染めない世界なんて幾らだってある、でも逆にいえば馴染める世界だっていくらでもあるんだ。世界は文字通り広いのに、なんでそんな狭いところでつまらないプレッシャーに縛られ続けなくちゃあいけない?どだい、そう考えると、人生に悩むことなんて馬鹿らしいだろう」 ああそうか、この人はただの旅人じゃあない。心の底から旅人なのだ。 いつか読んだ本の中で、僕は「吟遊詩人」という職業に憧れた。 詩を歌い、世界中を放浪する。 それは別段詩が好きというわけでも旅が好きなわけでもなく、何者にも縛られないその自由を謳歌する姿に憧れたのだ。 忠誠を誓う女王も、祈りを捧げる神も、もういない。 この「自由」な世界で本当に自由になるには、全ての安らぎから、全ての平穏から、自らを遠ざけなければならない。 この人は、野武士はそれをやってのけたのだ。     
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