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「必死だったんだねぇ」
「私……」
「ここにいる対価が労働だって思うなら、今はそれでいいよ。でも、僕たちはそんなの関係無い。案外お人好しなんだよぉ?」
「ご迷惑、お掛けしたら……」
「大丈夫、この森広くて深いもん。それに、何かあっても簡単にはやられない。これまでもそうして、しぶとく生き残ったんだからねぇ」
そんな風に言うシャルロが、にっこりと笑う。良く見せるニヤリと含みのあるものではなく、本当に優しい笑みだった。
「それに、僕たちと姫ちゃんはそう境遇が変わらない。僕たちもねぇ、国追い出されてるから」
「追い出されてる?」
「元々は王子様なんだよぉ? クーデターで失脚して、両親は死んだけどねぇ」
「私! ごめんなさい!!」
聞いてはいけない部分を聞いて、白雪姫は慌てて謝った。だがシャルロはまったく気にした様子もなく、穏やかな表情のままだ。
「いいんだよぉ、もう十年以上前の事だしぃ」
「あの……」
「それに、親らしい背中が最後だしぃ。まぁ、兄弟は無事だしねぇ」
頬に触れていた手が離れて、途端にそこが冷たく感じた。頼りなく見つめている青い瞳が、ふわりと笑っていた。
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