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そんな、少しずつ日常として今を受け止め始めた頃、まだ日の高い時間に突然玄関が開いた。その音を聞いた白雪姫は、次にギヨームの「兄さん!」という大きな声に驚いて立ち上がり、ゆっくりと玄関へと歩いていった。
玄関にはアベルがいたが、全身ずぶ濡れになっている。それでも手には愛用の猟銃が無事な状態であり、もう片方の手には子猫が一匹、同じくずぶ濡れで震えていた。
「どうしたんですか、アベルさん!」
思わぬ姿に驚いて近づいていく。本当に頭の先からつま先までで、まだ水が滴っていた。
「大した事じゃない」
「でも、風邪を引いてしまいます」
日中は暖かいが、夜ともなれば一気に冷え込む季節だ。それを証拠にアベルは少し震えている。唇も薄ら青くなっていた。
「とりあえず兄さん、これ」
タオルを取りに行っていたギョームが帰ってきて、アベルにタオルと毛布を着せかける。その間に、アベルは猫の乗っている方の手をズイッと白雪姫へと差し出した。
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