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「平気そうか?」
問いかけられて顔を上げて、その意外と近い距離に驚いて固まる。すぐ目の前、毛布に包まったままのアベルが進み出て、白雪姫の胸元に抱かれている子猫を見る。とても優しい、柔らかい目で。
「少し、温かくなったな」
「はい」
ほっとする。思えばアベルにはずっと、お世話になっている。見つけて助けてくれたこと、この屋敷に置いてくれること、慰めてくれたこと。
大きくてごつい手が白雪姫の胸元へと伸び、正確にはそこに抱かれている子猫へと伸びて、よしよしと頭を撫でる。自然と浮かぶ笑みに、白雪姫も恥ずかしながら微笑んでいた。
「お風呂、準備いいよにぃに」
「!」
白雪姫の背後でエミールの声がする。それにドキリとした。
妙に近い距離などを考えて、急に気恥ずかしく俯いてしまう。
一方のアベルはまったく気にしていない様子でエミールへと視線を向け、頷いて立ち上がって出て行った。
気が抜けた。距離感の近さにドキドキする。シャルロもそうだが、アベルは別の意味で壁を簡単に越えてくる。気付けばいるのだ、驚かされる。
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