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その時、彼女の進行方向から一発の銃弾が飛んできて、後方で男が呻いた。
あまりに一瞬で分からない。だが男は持っていた猟銃を取り落とし、手を押さえて後退っていた。
「おい、人の庭で物騒な事してんじゃねぇ」
まだ若い男の声。倒れたまま正面を見た彼女はそこに、一人の若い男が立っているのを見つけた。
首に掛かるくらいの黒髪、凛とした青い瞳の、綺麗な顔立ちの青年だった。
「どうする。出て行くなら見逃してやるが、続けるなら次は頭に穴が空くぞ」
青年は男と同じような猟銃を構えている。その銃口は、彼女の背後にいる男へと向けられていた。
「ちっ」
男は素早く落とした猟銃を拾い上げると、そのまま一目散に退散していった。
「あの……」
少女は助けてくれた青年を見上げる。お礼を言わなければと立ち上がろうとしても、酷く捻った足首は言うことをきかず痛みに立ち上がる事もままならなかった。
「捻ったのか」
「あの……」
「下手に動かすな」
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