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銃を下ろし、ゆっくりと近づいてきた青年が少女の足を手に取り診ている。そして徐に自分も持っていた手ぬぐいを手に取ると、動かないようにしっかりと固定した。
「っ!」
「ここじゃ色々足りないから、俺の家に連れて行く。ほら」
「え?」
背を向けた青年は屈んだまま、顔だけ振り向いた状態でいる。
何を意味しているのか分からずに呆然としていれば、青年は面倒臭そうに舌打ちをし、自身の背をぽんぽんと叩いた。
「早く乗れ」
「え!」
「いいから!」
おずおずと少し立ち上がり、青年の背に体を預ける。自分よりも高い青年の体温に、少女は何処か気恥ずかしさを覚えてひっそりと顔を赤らめた。
青年はまるで少女の体重など無いもののように軽々と立ち上がり、足元の悪い森の中を進んでいく。
向かっているのは、更に森の奥だった。
「そう言えばお前、名前は?」
「え? あっ、白雪姫と申します」
「俺はアベルだ」
とても短い会話を交わした二人は、その後は無言のまま深い森の中へと入っていった。
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