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「恋など一時。新たな出会いで、忘れるものです」
「消えない想いはあると思います。少なくともこの物語の二人は、とても強い絆で結ばれています。時が過ぎてもきっと、例え新しい誰かがいても、完全に忘れてしまう事は出来ないと思います」
言い募れば、ビセンテは少し苦しそうな顔をする。綺麗な眉根が僅かに寄った。
「拘りますね。経験がおありですか?」
「いいえ。でも、信じたいと思うのです」
「信じたい……ですか」
青い瞳が閉じられる。本がパタンと閉じられて、テーブルへと置かれる。その直後、白雪姫の視界はビセンテではなく天井を映していた。上半身をソファーに倒された白雪姫の前には、優美なままのビセンテがいる。
「試してみましょうか?」
「え?」
「そのように美しい愛が、産まれるのかどうか」
「それはどういうっ!」
唇が首筋に触れて、ビクリと震える。ゾクゾクとした感覚が肌の上を走る。
逃げなければ。思っているのに、体は動かない。
これでもまだ、信じている。ビセンテは、こんな事をしないと。
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