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2話 森の中の家
アベルが連れてきたのは、森の中にひっそりと建つ古びた洋館だった。
鉄柵はあれど錆があり、洋館も外壁の所々に蔦が絡まっている。
「こんな場所に、洋館があるのですか?」
「やんごとなきお貴族様の、お楽しみの場所かなんかだろ」
大した気にも留めていない様子のアベルは白雪姫を背負ったまま、洋館の中へと入っていった。
「アベル兄さん、お帰りなさい!」
入ってすぐのエントランスの奥から、一つ声がする。見れば白雪姫と同じ年頃の少年が、ニッコリと笑って出迎えていた。
肩にかかる程度の、柔らかな金色の髪。大きく丸い青い瞳は穏やかそうに見える。顔立ちは少年らしく、身長は白雪姫よりも少しだけ高いくらいに思えた。
「ギヨーム、丁度いい。こいつを診てやってくれ」
ギヨームと呼ばれた少年の目が、背負われている白雪姫へと向けられる。パチパチと数度瞬きした少年はとても驚いている様子だった。
「どうしたの兄さん、その子……」
「少し行った所で男に追いかけられていた。変質者かと思ったが、どうやらもう少し事情は複雑らしい。逃げている間に足を捻ったようでな」
「こっちに」
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